今回のお客様は、
まさに“男の浪漫”が詰まった修理でした。

お持ち込みいただいたのは、
eBayで購入された海外製ブーツ。
スチールトゥ付きで、本来は明らかにライディング向けの作りです。
ところが、クラッチが当たる部分の革が剥がされており、
一見するとダメージにも見える状態。
ただ、よく確認すると——
革自体は傷んでおらず、摩耗でもない。
前の持ち主が街歩き用として意図的に加工した痕跡でした。
操作性よりも歩きやすさを優先し、
バイクを降りた生活仕様へと振り切った一足。

しかし今回のオーナー様は、
このブーツを「もう一度、バイク用として使いたい」と。
そこで今回は、
削られていた部分に革をあて、形状を復元し、
クラッチ操作に耐えられる仕様へ戻す修理を行いました。
つまり今回の修理は、
単なる補修ではなく——
街仕様にされたブーツを、再び“走る道具”へ戻す作業。
ブーツが本来いるべき場所へ、帰してあげる修理でした。



お客様の愛車は
TRIUMPH T20 TIGER CUB(1965年式)200cc。
英国オフロード黎明期を支えた名車で、
軽量かつトルクフル、ダート走行に適したクラシックマシンです。

さらにお客様の趣味は、
舗装路ではなく、土の上を走るモトクロスレース。
路面状況が刻々と変わるダートコースで、
マシンと身体をコントロールし続ける競技。
装備の信頼性が、そのまま安全性に直結します。
本来はこのバイクで来店予定だったそうですが、
当日はエンジンがかからずレッカー対応。
それでも
「こういうトラブルも含めて古いバイクは最高なんですよ」と、
終始笑顔で話されていました。
新年早々、Hell On Wheelsの走行会にも参加。
ヘルメットはBuco、グローブも使い込まれた本革。
装備も思想も、すべてが“本気仕様”。


効率やコスパでは測れない世界。
手間も不便も、すべて楽しむ趣味。
正直、これは男にしか分からない領域かもしれません。
でも、その世界に本気で向き合っている姿は、やはり格好いい。
今回はブーツの修理でしたが、
「また走る」という選択を後押しできたこと、
職人として本当に嬉しいご依頼でした。
この度は、大切な相棒の足元を任せていただき、
誠にありがとうございました。
次の走行前メンテナンスも、いつでもお待ちしております。
