今回のお客様は、以前、靴の染め直しをご依頼いただいたお客様です。
その靴をお預かりした際に、
「実はこれもお願いしたくて…。」
と、一緒にお預かりしたのがこちらのお財布でした。

お父様が知人の結婚式でハワイを訪れた際のお土産としてプレゼントしてくださった、
**Martin & MacArthur(マーティン&マッカーサー)**のお財布です。
マーティン&マッカーサーは、ハワイの希少な木材「コアウッド」を使った家具や革小物で知られるブランド。
ハワイの自然や伝統を大切にしたものづくりで、多くの人に愛されています。
このお財布も、お父様が
「このグレーなら、あまり持っている人はいないだろう。」
と選んでくださった特別な一品だったそうです。
今回の修理は、
・バネホック交換
・全体の染め直し
長年の使用で色褪せた革を、元の色を一から調色し、できる限り近い色を作りながら丁寧に染め直しました。
この調色による染め直しは、天草製作所が特に得意としている修理の一つです。
Before


after


また、バネホック交換も簡単な作業ではありません。
ホックを交換するためには、一度革を分解し、交換後に元通り組み直す必要があります。
見た目以上に時間と技術を要する修理です。
革製品は、新しいものへ買い替えることもできます。
しかし、お父様から贈られた思い出の財布は、新しい財布では代えることができません。
だからこそ私たちは、一つひとつの工程を丁寧に積み重ねながら修理をしています。
そのため、このような修理は決して安価ではありません。
時間と技術、そして経験を注ぎ込むからこそ、本当に直したいという想いにお応えできる仕事だと考えています。
そして、この日もう一つ素敵なお話がありました。
お客様が着られていたブルーのパッチワークワンピース。
お聞きすると、洋裁をされている叔母様の手作りとのこと。
一枚一枚の生地を組み合わせた温もりのあるデザインが、とても印象的でした。

お父様から贈られた財布。
叔母様が仕立てたワンピース。
どちらにも、大切な人の想いが込められています。
そんな想い出を長く受け継ぐお手伝いができることを、職人としてとても嬉しく思います。
この度もご依頼いただき、誠にありがとうございました。